本のご紹介


機芸出版社刊(2000年11月)

B5版96ページ(カラー15ページ)定価2300円(税込み)

「まえがき」より

車輌を自作して,それを風景の中で走らせるためのレイアウトをつくってみたい。そう思っていてもプロトタイプを調べ上げていくうちに構想ばかりが膨れ上がり,なかなか着手することができません。そこで,注目したいのがトロッコ・モデリングです。いわゆるトロッコとは林業,鉱業,土木工事のために敷設された産業軌道で,同じナローゲージ(標準よりもレールの間隔が狭い軌道。狭軌ともいう)でも軽便鉄道よりもさらに小型,軽量で素朴な設備のもとで運営されています。

実際の産業軌道では,規格化された既製品の機関車が多く使われます。このことは模型で考えてみると,車輌の選択に自由をもたらし,海外のトロッコのキットを組み立てて,日本の風景で走らせても不自然ではないことになります。一方,これとは逆に自社の修理工場で作られた車輌も多く見受けられます。これは,どのような自由形も容認できるということになります。現場設計の車輌には,間に合わせのような設計や非対称でゆがんだ車輌も多々見受けられます。このように,トロッコはオリジナリティあふれる鉄道の世界をつくるのにうってつけの素材といえます。また,線路は急カーブや簡易な道床で設営されていますので,かなり限定されたスペースでレイアウトをつくることができます。車輌製作からレイアウト製作まで,一貫して取り組めるトロッコ・モデリングを一冊にまとめてみたのが本書です。

本書でとりあげた模型の大きさはO(オー)スケールですが,ナローゲージとしての軌間は標準型HOと同じ16.5mmを採用しています。これは実物の762mm(2フィート6インチ)に相当し,軽便鉄道や産業軌道として広く使われている規格ですが,模型としては数多く出回っているHOのパーツが活用できることが大きな利点です。

本書には大きな特徴があります。まず,プラスチック材料の徹底活用を考えました。車輌,ストラクチャーからレイアウトに設営した橋や坑口にいたるまでスチロール板を主な製作材料にしています。また,これらの部品構成や寸法を示すためにコンピュータで作図した図面を用意しました。これらの図面は,仕様の変更や,独自に設計されるときの寸法割り出しのヒントとしても活用していただけると思います。是非,イマジネーションを膨らませ,独自の軌道の世界を創造してみてください。本書がそのためのお役にたつことができれば幸いです。